Author Archives: 永野裕之

1974年東京生まれ。
暁星高等学校を経て東京大学理学部地球惑星物理学科卒。
同大学院宇宙科学研究所(現JAXA)中退。
高校時代には数学オリンピックに出場したほか,
広中平祐氏主催の「数理の翼セミナー」に東京都代表として参加。

現在,個別指導塾・永野数学塾(大人の数学塾)の塾長を務める。
これまでにNHK,日本経済新聞,『日経おとなのOFF』他
テレビ・ビジネス誌などから多数の取材を受け,
週刊東洋経済では「数学に強い塾」として
全国3校掲載の1つに選ばれた。
NHK(Eテレ)「テストの花道」出演。

著作に『大人のための数学勉強法』
『大人のための中学数学勉強法』(以上ダイヤモンド社)。
『根っからの文系のためのシンプル数学発想術』(技術評論社)。
『問題解決に役立つ数学』(PHP研究所)。

プロの指揮者でもある。
既婚。2女の父。

【新刊】初歩からわかる数学的ロジカルシンキング

 

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9月7日(月)にSCCさんから新刊が出ます。
タイトルは『 初歩からわかる数学的ロジカルシンキング 』です。

最近、どこかの知事さんが「高校教育で女子に(三角関数の)サイン、コサイン、タンジェントを教えて何になるのか」と発言して大きな問題になりました(その後、撤回されたようですが…)。

私は一数学教師として、この知事さんの発言には2つの論点から反論したいと思います。1つは、三角関数を大人になってから使う人は多くなくても、それを勉強しておかないと進めない道というのが確実にあるのだから―そして勉強とは将来の可能性を拡げるためにするものなのだから―まだ何者になるかが決まっていない高校生にとって「必要ない」とは決して言えないという点。それともう1つは、三角関数を通して学べる相似や周期性の応用範囲は驚くほど大きく、それは進路に関わらず身につけておくべきだという点です。

ただ、多くの方がこの知事さんの発言に怒りや驚きを禁じ得なかったのは、「女子に」というフレーズが付いていたから(女性蔑視に繋がるニュアンスを多分に含んでいるから)ではないのかな、と思う節も実はあります。もしこれが単に「高校生に三角関数は必要ない」という発言であれば、「うんうん。三角関数なんて僕も使ったことないよ。そもそも数学なんて苦労して勉強させられた割には全然役に立ってないもの」と密かに同調する大人は少なくなかったかもしれません。

本書は、そんな方にこそ読んでいただきたいと思います。

「数学的」ロジカルシンキングについて

最近はどこの書店でも、ビジネス書の一角にロジカルシンキング関連の書籍が並ぶようになりました。今や「ロジカルシンキング」という言葉を聞いたことのない人はほとんどいないのではないでしょうか?

「ロジカルシンキング」という言葉がこれほど広く知られるようになったのは、マッキンゼーをはじめ主にコンサルティング会社で磨かれたコミュニケーション力を高めるためのスキルが今世紀の初め頃から特に注目されるようになったからです。ここでいう「ロジカルシンキング」は、理解のしやすさと説得力を高めて、伝えたいことをできるだけ分かりやすく説明する方法のことを指します。

一方、ロジカルシンキング(logical thinking)を直訳すれば「論理的思考」となります。論理的思考というのは「A=BかつB=Cならば、A=C」に代表されるような、立場・主義・主張の如何を問わずどのような人間にとっても正しいことが明白な結論を導く考え方のことです。論理というブロックを積み上げることで真理を探求してきた哲学や数学の歴史とは論理的思考の歴史であると言っても過言ではありません。この意味における「ロジカルシンキング」は、ヒラメキや勘では太刀打ちできない問題を解決しようとするときに大きな力を発揮します。

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本書のタイトルは「ロジカルシンキング」の前に「数学的」と付いています。それは私が、上の2つの力を磨くのに数学ほど適した学問はない、と考えているからです!……なんて書くととても難しそうに思われるかもしれませんが、本書には難解な数学は全く登場しません。使うのは中学までの数学のごくごく基本的な部分だけです。数学の部分がわからない、ということはまずないと思います。

全体に、ドラえもんや婚活パーティーやワインの価格など身近な例を多数取り上げ、読者の皆さんがロジカルシンキングとそれに繋がる数学のイメージを膨らませやすいようにでき得る限り配慮したつもりです。

数学を苦手にしている人が(もちろん得意な人も)本書を通して数学から学ぶべきものをイメージしてもらえるようになれば、筆者としてこれ以上ない喜びです。

本書の内容

本書は
・第1章 コミュニケーションのための数学的ロジカルシンキング
・第2章 問題解決のための数学的ロジカルシンキング
・第3章 ツールとしての数学的ロジカルシンキング
の3章立てになっています。

第1章はロジカルシンキングにおける「コミュニケーション力」を磨いてもらうことが目的です。この章にはロジカルシンキングではお馴染みの「MECEな分類」、伝えたい内容に即した「グラフの使い方」、情報を増やすための「マトリックス」、論理的であるための最初の一歩である「定義の確認」、そして説得力を増すための「数字の使い方」などが書かれています。

第2章ではロジカルシンキングにおけるもう一つの側面「問題解決能力」を磨いていきます。この章には、因果関係の理解を助けてくれる「関数」、推論の基本である「演繹法と帰納法」、「ならば(⇒)」の正しい使い方を学ぶ「必要条件と十分条件」、そして正攻法では糸口が見つからない問題を攻略する2つの視点、すなわち逆の視点の「余事象」と否定の視点の「対偶と背理法」などが登場します。

最後の第3章では、ロジカルシンキングのためのツールとして使える数学を紹介します。MicrosoftやGoogleの入社試験で有名になった「フェルミ推定」、交渉における最適解を教える「ゲーム理論」、画期的なモデル化の一例として「グラフ理論」、そして現代人には欠かせない素養である統計から、データのばらつきを調べる「標準偏差」と相関関係を捉え未知なる値を予想する「回帰分析」を取り上げました。この章では特に理論的背景よりも、ツールとしての使い方に焦点をあてています(統計についての2つの節はExcelを使った計算方法がメインです)。

 

目次

序 章 数学的ロジカルシンキングのススメ
ロジカルシンキングとは
なぜロジカルである必要があるのか?
「数学的」とはどういうことか?
本書の使い方

第1章 コミュニケーションのための数学的ロジカルシンキング
1.1 思考を整理し困難を分割する
【MECEな分類とその効能】
1.2 目的別にグラフを使い分ける
【4種類のグラフとその使い方】
1.3 掛け算で情報を増やす
【マトリックス】
1.4 誤解をふせぐ
【定義の確認】
1.5 プレゼン力をあげる
【数字の上手な使い方】
練習問題
練習問題の解答・解説

第2章 問題解決のための数学的ロジカルシンキング
2.1 信用できる自動販売機を見極める
【関数と因果関係】
2.2 ドラえもんが生物として認められない理由
【演繹法と帰納法】
2.3 怪しげな壺を買わなくてもすむ方法
【必要条件と十分条件】
2.4 心理学テストに学ぶ「逆を考える視点」
【余事象】
2.5 名言とアリバイに学ぶ「否定の視点」
【対偶と背理法】
練習問題
練習問題の解答・解説

第3章 ツールとしての数学的ロジカルシンキング
3.1 地球外文明の数を見積もる
【フェルミ推定】
3.2 義理チョコは必要か?
【ゲーム理論】
3.3 婚活パーティーをモデル化する
【グラフ理論】
3.4 リーマン・ショックは「極めて異例」と言えるか?
【標準偏差】
3.5 ワイン方程式
【相関関係と回帰分析】
練習問題
練習問題の解答・解説

おわりに
ロジカルであるために一番大切なこと ~論理力は心で育つ~

参考文献

【出版社サイト】
3章の一部が立ち読みできます!
【SCC Books】初歩からわかる数学的ロジカルシンキング

【新刊】『ビジネス×数学=最強』~眠っていた論理力を呼び覚ます18の方法

 

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本日(6月9日)、すばる舎さんから新刊が出ます。

タイトルは『ビジネス×数学=最強~眠っていた論理力を呼び覚ます18の方法』です。

学生時代、数学に苦しんだ人は
「なんであんなに苦労して数学なんて勉強させられたんだ!?ヾ(*`Д´*)ノ"」
と怒りにも似た疑問をお持ちかもしれません。
本書はこの問いに対する私なりの"答え"でもあります。

(以下は本書の「はじめに」から引用・抜粋しBlog用にリライトしたものです)

数学力とは

そもそも「数学力」とは何でしょうか?
多くの文系の方が数学と聞いて連想するのは、方程式、関数、図形、ベクトル、確率、数列、微分・積分…などの単元名とそれに関連する数式やグラフのようです。あたなはどうですか? そして「数学力」とは数学の問題が解ける力のことだと思っていませんか?
本書の目的は、これが誤解であることに気づいてもらうことと、文系のあなたがすでに持っている「数学力」を使えるようになってもらうことです。

数学力とは、単に関数や方程式やベクトルの問題が解ける力のことではなく、ものごとを論理的に考えられる力、すなわち論理力のことです。三角関数も2次方程式も等差数列もこの能力を磨くための道具に過ぎません。

では「論理力」とはいったい何でしょうか?

一概には言えないかもしれませんが、私は
・人に自分の考えが伝えられる
・人の言っていることが分かる
という2つの力のことだと思っています。

人の上に立って自分の考えを皆に伝え、人々を引っ張っていくためには自分の考えを相手にきちんと伝えられる論理力が不可欠です。また、たとえ自分と考え方が違っても、人の意見が理解できるのも論理力のなせる業です。

「方程式を解いたり、図形の性質を証明したりしなくても論理力を磨くことはできるんじゃないの?」

という声もあるでしょう。確かにそうかもしれません。

でも、論理力を効率よく育てるためには、まずは誤解が入り込む余地のない言葉=数学を使って論理を積み上げる訓練をするのがもっとも近道なのです。だからこそ世界中の学校で文系、理系の区別なく数学は必須科目になっています。

数学力=論理力だとは書いてきましたが、論理的に考えることが理系の専売特許だなんて私はさらさら思っていません。むしろ、文系の方は自らが秘めた力に無意識なぶん理系よりものびしろがあるだろうと思いますし、さらには持ち前の国語力で数学を日常生活に活かしてもらえる可能性も非常に高いと思っています。

だからこそ私は本書の筆を取りました。

ビジネス✕数学

 

本書の使い方

いま、

「そんなこといったって…数式を見ると、頭痛がしてくるし…」

と思ったあなた、ご安心ください。本書には数式はほとんど登場しません(わずかに登場するにしても中学レベル以下です)。

その代わり、できるだけ読者の皆さんの身近にある日常を引き合いに出し、そのなかに隠れている数学的なものの考え方(=論理的な考え方)を紹介するように心がけました。そして何より、「数学的なもの」を敬遠しがちな方にも読みやすいように、イラストや図版を多用しながら「わかりやすさ」には最も配慮して書いたつもりです。

また、各節(全部で18節あります)の最後には、会議の資料、プレゼン、マーケティング、商品開発…といったビジネスに直結する数学的スキル、さらには、接待、上司の説教、飲み会…といった仕事上のごく日常的なシーンを切り口に、「問題」を設けてあります。ぜひ、クイズに答えるような気持ちで考えてみてください。

 

なぜ「最強」なのか

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繰り返しますが、本書に紹介する「数学的」な考え方のほとんどは、すでにあたなの中にあるはずです。

しかし文系の方は、多く場合それに対して無意識です。

無意識のうちに数学的に考えることで得られたアイディアは本人にとっても周囲にとってもヒラメキに感じられ不確実なものですが、意識して数学的に考えられるようになれば「ヒラメキ」は必然のものになります。

ビジネスのあらゆるシーンで意識的に数学力を発揮できるようになれば、これほど心強いことはないでしょう。いま、この本を手にしてくれているあなたにも是非そうなってもらいたい―タイトルに「最強」ということばを使ったのはそんな私の願いと期待の現れです。

本書を読み終えたとき、

「あ、この考え方は『数学的』なのか。これからは意識して使ってみよう」

と思ってもらえれば、筆者としてこれ以上の喜びはありません。

 

本書の内容

第1章 数学的「情報整理」術……まとめ上手になろう

・MECEな分類
・掛け算的整理
・次元を増やす
・グラフの使い分け
・数値化
・相関係数

第2章 数学的「発想」術……ひらめき上手になろう
・一般化
・帰納
・演繹
・必要条件と十分条件
・定義の確認

第3章 数学的「問題解決」法……生きかた上手になろう
・余事象の利用
・立場を変える
・背理法
・微分
・積分
・ゲーム理論

詳しい目次は…『ビジネス×数学=最強』目次(PDF)

↓は出版社が付けてくれた内容紹介です。

本書は、誰もが本来もっている論理的思考力を呼び覚まします。著者によれば、文系の人は自らが秘めた力に無意識なぶん、むしろ「のびしろ」があるそうです。日々の仕事で選択に迷うとき、袋小路に入りこんだとき、数学は活路(=答え)を導く武器になるのです。まさに読んでナットク、知ってオトクな「実学数学」18講義。本書で「偶然」のヒラメキを意識的な「必然」に変えられる、最強ビジネスパーソンになってください。

出版社サイト→ビジネス×数学=最強 – 株式会社 すばる舎

後期日程で東大に合格した生徒の話【指導記録】

 

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永野数学塾の生徒さんが後期日程*1で東大に合格しました!

合格した浩一くん(仮名)が入塾してくれたのは高校2年の春。英語と国語はよくできていたものの数学が足を引っ張っている状態でした。でもその後の指導の中で着実に実力を伸ばし、センター利用で出願した私大にはすべて合格、一般入試でも早稲田と慶応に合格しました。私は、東大にも前期で合格するだろうと思っていました。

しかし、やはり試験は水物です…。

東大の前期試験では緊張からか数学で失敗し不合格。改めて試験の怖さを痛感しました。でも浩一くんが偉かったのはそこで少しも挫けなかったことです。前期の合格発表直後に貰ったメールには言い訳がましい言葉は一切なく、

「後期に向けて勉強するのみです!」

という短くも力強いメッセージが書かれていました。

そしてそのまま強い意志で後期に臨み、見事捲土重来を果たしてくれました!!

後期の問題は前期よりもかなり難しいのが普通で、加えて倍率も高まります。それでも執念でその狭き門をこじ開けた彼は本当に見事です。この経験は大きな自信となって今後様々な人生のシーンで彼の背中を押してくれることでしょう。

 

はじめに

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私は浩一くんの「東大に入りたい」という気持ちと自主性を尊重し、彼の邪魔をしないように努めていただけです。「私が東大に入れました」などと言う気持ちはさらさらありません。今は、教師として彼の成長を間近で感じることができたこと、そして大願を見事に(ドラマチックに)成就させる瞬間に立ち会えたことを光栄に思っています。

ただ、彼を指導してきた中で私が感じたこと、注意したことを指導記録的に残しておくことは、同じように高い目標をもってがんばる受験生や、そのまわりの先生方や親御さんたちの役に立つこともあるかと思い、この記事を書くことにしました。

 

勉強ができるようになるために必要な3つのこと

浩一くんの場合、特筆すべきはやはりその意志の強さだと思います。最初から東大の理科一類を第一志望にしていましたが、

「このままではダメだ」

という危機感を常に持っているようでした。塾にもそれこそ台風が来ようが大雪が降ろうが休むことなく非常に熱心に通ってくれました。

私は常々、勉強ができるようになるためには3つのことが必要だと思っています。それは

  1. 危機感
  2. 孤独感
  3. 勉強法

の3つです。これについては拙書『東大教授の父が教えてくれた頭がよくなる勉強法』に詳しく書きました。その中で浩一くんのエピソードも紹介させてもらったので少しだけ引用します。

P20「勉強ができるようになるために必要な3つのこと」より~
(前略)
…先日もこんなことがありました。
その日、首都圏は記録的な大雪に見舞われていたので私はある生徒のご家庭に
「今日は外に出るのは危険ですから休講にしたいと思います。」
と連絡しました。すると生徒の母親は困ったように
「本人が『絶対に教室に行きたい』と希望しており、だいぶ前に出発しました…」
とのこと。
その後予定より10分遅れて教室に入ってきた件の生徒は
「ここはスキー場のロッジですか?」
と思うほどの重装備、というかスキーウェアに身を包んでいました…
(後略)

「今のままではマズイ」という危機感と「誰も助けてくれない」という孤独感を持って、正しい勉強法で取り組めば、学力は伸びます。

 

指導において気をつけたこと【指導記録】

前述の通り、浩一くんの指導で私が一番気をつけたことは、「邪魔をしない」ということです。もともと考える力を持っている生徒さんなので、彼の自主性を妨げたり思考を止めてしまったりするような指導はしてはならないと思っていました。

最初に「穴」を埋める

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浩一くんは入塾当初、ある単元の問題は入試レベルでも解けるのに、他の単元では教科書レベルの問題でも解けないという、いわゆる「穴」のある状態でした。そこでまずはその穴を見つけて埋める作業をしました。

ちなみに(私見ですが)、どの単元についても教科書レベルに載っている例題と応用例題がすべて解けるようなれば、それだけで数学の偏差値は55~60になります。これは決して難しいことではありません。受験生で現在数学の偏差値が50を切っている人はまず、教科書の例題(とその類題)を徹底して演習することをお勧めします。

●最初はIA、IIB中心の演習(6~7割は解ける問題)

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半年ほどですべての単元の穴が埋まってからは、塾の方で問題を用意して(売るほどあります)、それをひたすら解いてもらいました。

ただし高校3年の秋頃まで、演習は数IA、IIBを中心にしました。数IIIはテクニックさえ習得できれば後略できる問題が多いのに対して、IA、IIBの問題(特に難問)には「問題を解く」ための本質的なアプローチが必要になるからです。

数IIIで躓く際の原因がIA、IIBの演習不足にあることも少なくありません。

一般的に言えることですが、やってもらう演習の難易度は難しすぎないようにします。いくら東大志望と言っても最初から東大の過去問ばかりをやるのではなく、6~7割は解けるレベルの問題をやりながら、徐々にレベルを上げていくことが大切です。これまでの経験から「6~7割は解けるレベルの問題」というのが最も効率よくたくさんのことを学べるように思います。

●設計図ができるのを待つ

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浩一くんが解く姿を観察していると、最初は微動だにしません。でも、チンプンカンプンで固まっているのではなく(そういうときもありましたが)、解答に至る道筋(設計図)を考えているのです。こういうときに下手に声をかけるのは彼の思考を邪魔するだけなので私は黙って(遠くから)見守ります。

数学が苦手な生徒さんの多くは、問題を与えると闇雲に解き始めることが多いです。でも、そういうときは大抵解けません。ただノートが汚れていくだけです…。そういう生徒さんには、

「いきなり解き始めないで、まずは解答の道筋を考えるんだよ」

と指導します。

数学ができるようになるためには、その問題を解くには何が必要かを分析する力、そして何から始めるべきかを見通す力を養うことが大切なのです。

●解法を押し付けない(解法は一つではない)

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浩一くんなりの「設計図」が出来上がって解き出した頃に、私は彼の横に行って手元を覗き込みます。そこでアサッテの方向に向かっているように見えるときでも、いきなり否定はせずに

「なぜこう考えたの?」

と尋ねます。良問は色々な方法で解けるものです。実際浩一くんは、私が予想もしていなかった設計図を描き見事に解いてくれることがありました。

もちろん本当に「アサッテ」の方向に行ってしまっているときや、道筋は立っているけれど時間がかかりすぎる場合もあるので、そういうときには

「こういう風に考えてみたら?」

とヒントを与えます(答えそのものはめったに教えません)。

●発想の源を伝える

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ここで大切なのは「なぜそう発想できるのか?」という発想の源を伝えることです。これがないとその場限りの解法になってしまい、本番で解かなくてはいけない未知の問題に備えることができません。

これは想像ですが、彼が熱心に通ってくれたのは私から(参考書の類にはあまり載っていない)こうした「発想の源」が聞けたからかなと思っています。

●宿題は出さない

私は浩一くんには宿題は出しませんでした。彼ならば、もっと演習が必要であると感じれば、自分で本屋に行って、自分で問題集を探して解くだろうと思ったからです

実は親御さんから

「家庭学習についてもご指導をお願いいたします」

というメールを頂戴したこともありましたが、私は

「家庭学習については浩一くんの中で既に確立されたものがあるはずですし、私の方から特に改善をお願いしたいと思う点はありません。確かに浩一くんくらいの年齢になりますと、どの生徒さんも自分の学習状況を親御さんに報告をすることは少なくなりますが、それは自立の証拠でもありますので、寧ろ頼もしいことだと思われて良いと思います。」

と返しました。

宿題を出さない生徒さんは浩一くんの他にもいます。私から見て十分に自主性が育っていると思われる生徒さんには基本的に宿題を出しません。宿題は、時に生徒を受け身にさせ、せっかく育ってきた自主性(自学自習の習慣)を阻害してしまうからです。

また、演習は数をこなせば良いというものでもありません。大量の問題を解くより、良問を丁寧にじっくり解くことの方がうんと効果的です。

これについては私が(勝手に)師と仰ぐ長岡亮介先生もご著書『東大の数学入試問題を楽しむ: 数学のクラシック鑑賞 』の中で次のように書かれています。

せっかく勉強をするなら、「馬が餌を食べるようにただひたすら問題を解く」のではダメだ。一流の料理人が、あるいは愛情溢れる母親が丹精込めて作った美味しい料理を心豊かにいただくことを通じて、心身が成長するように、品格の高い、考えるに値する、すばらしい良問をじっくりと楽しむようにやることを通じて、若者の知力は信じられないほど大きく成長する。エリートにふさわしい誇りと責任と哀しみを理解できるようになる。

浩一くん、本当におめでとう!!

*1:
東大の後期日程試験は、文一から理二までが一括で募集され、全員が同じ試験を受ける。合格者は入学手続きの際に進学する科類を選択する(理三は選択できない)。
《受験科目》
総合科目I 英語
総合科目II 数学(数IIIを含む)
総合科目III 小論文

【書籍】NHKテストの花道 【教科別】ニガテ解消の合格術

 

 

昨日、主婦の友社さんから『NHKテストの花道 【教科別】ニガテ解消の合格術』が発売されました。

本書には以前出演させて頂いた際に紹介させてもらった「もどりま表」「ゴールから考える!」が掲載されています。

【TV出演】NHK(Eテレ)「テストの花道」~もどりま表の活用例他(数学って面白い!) < 永野数学塾塾長日記(永野裕之のblog)

【TV出演】NHK(Eテレ)「テストの花道」~ゴールから考える!(証明問題の解き方) < 永野数学塾塾長日記(永野裕之のblog)

詳しくは上記リンクをご覧頂ければ、と思いますがこのように書籍としても紹介していただいて大変光栄です。 本書は、各科目の苦手克服がテーマで「花道の先輩」が行っていた勉強方法が他にもたくさん紹介されています。 ご興味のある方は是非お手に取ってみてください。

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テストの花道

ちなみに、「もどりま表」を紹介させて頂いた「数学って面白い!」の回は、来る4/18(土)午前10:00~再放送されるそうです。

NHK テストの花道

数学(mathematics)の語源

 

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数学(mathmatics)の語源は、ギリシャ語の「マテーマタ(mathemata)」だと言われています。

マテーマタとは「学ぶべき事(複数形)」という意味です。つまり、最初「数学」と「学科」は同義でした。

古代ギリシャにおけるマテーマタ(数学=学科)は以下の4つを指します。

1)算術
2)音楽=応用数論
3)幾何学
4)天文学=球面学(動きの中の幾何学)

ちなみに、音楽が「応用数論」として捉えられていたのは、弦を「部分:全体=1:2」となる点でおさえると1オクターブ上の音、「部分:全体=2:3」となる点でおさえると5度の和音になって綺麗に調和することなどが知られていたからです。

注)そもそもオクターブや「ド」と「ソ」等の音程の関係について、最初にルールを作ったのは古代ギリシャの数学者ピタゴラス ( BC580頃~BC500) の学派でした。

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これら4つをまとめて「4科=クアドリヴィウム(quadrivium)」と言いました。

中世になるとこれに
「文法」
「修辞学」
「弁証法」
の「3学=トリヴィウム」が加わり、「3学4科」=「自由7科=リベラルアーツ(liberal arts)」へと発展しました。

「だから、どうした」というお話ではありますが、古代の「数学」の中に「音楽」と「天文学」が含まれていたのは個人的に大変嬉しいです(*´∀`*)

《参考図書》

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