天気予報はなぜ外れるのか?


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 [日本気象協会]

数日前から「2月6日未明から夕方にかけて広い範囲で大雪となり、関東平野部でも10cmの積雪となる見込みです。」との予報が出ていました。これに伴って、前日から早々と鉄道の運休や間引き運転が決まったり、学校の休校が決まったりしました。私の娘が通う幼稚園でも本日予定されていた行事の延期が決まりました。しかし実際は東京や横浜ではほとんど道路への積雪はありませんでしたね。肩透かしをされたような気分になっている人も多いと思います。

先日(1月14日)の大雪の際には逆に「都心では積雪の恐れは小さい」との予報が出ていただけに、天気予報は短い期間に2度も大きく外れてしまったことになります。これに対し「気象庁の怠慢だ」「しっかりしろー!」などの怒りの声が出てくるのは仕方のないことでしょう。

しかし、天気予報には地球惑星物理学科時代のかつての同僚や先輩・後輩の多くが関係しているので、今日は彼らの擁護をしたいと思います(まあ、言い訳ですが…)m(_ _)m

天気予報の難しさ

天気というのは、すなわち大気の状態のことですからこれを物理的に解析するためには、いわゆる「流体力学」と言われる物理が必要になります。

この流体力学の基本となるのが、「ナビエ・ストークスの方程式」と呼ばれる微分方程式で一般には次のような形をしています…

なんじゃこりゃ~と発狂したくなるような式ですね。でも安心してください。この式が本当に理解できるのは大学の物理学科に進んだ一部の専門家だけです。
今日はこの方程式には深入りしません(^_-)-☆。

ここで強調したいのは、この微分方程式は「解けない」方程式だということです。そもそもこの方程式を満たす一般解が存在するかどうかさえも未だに分かっておらず、ナビエ・ストークス方程式の解の存在を解明することは「ミレニアム懸賞問題」として、100万ドルの懸賞金がかけられています。
流体の挙動を表すナビエ・ストークス方程式が解ければ、未来永劫の天気を100%の的中率で予想することができます。しかし、現在のところそれは叶わぬ夢です。

スーパーコンピューターの出番

日立製作所

ではどうするか?

ナビエ・ストークス方程式を数学的(代数的)に解くことは諦めます(T_T)。

その代わり、
・質量保存則

・熱エネルギー保存の法則 

・水蒸気保存の法則

・気体の状態方程式 

等を加味しながら、この方程式の「解」を近似的に求めることにします。これを数値シュミレーション(数値解析)と言いますが、数値シュミレーションには膨大な計算が必要になるので、スーパーコンピュータが用いられます。

天気予報の難しさに追い打ちをかけるかのように、「ナビエ・ストークス方程式」は非線形微分方程式(1次式ではない微分方程式)であるために、初期値のわずかな誤差が非常に大きなズレになってしまう(バタフライ効果)という困った特性を持っています。解を数値シュミレーションによって近似的に求めるには、気圧、気温、風などのデータが必要になりますが、測定値に僅かな誤差があると、バタフライ効果によって予報は大きくズレてしまうのです。スーパーコンピューターをもってしても2週間以上先の天気を予報することはほぼ不可能と言われています。

バタフライ効果

バタフライ効果は

「ブラジルでの蝶の羽ばたきはテキサスでトルネードを引き起こす」

などと表現され、通常なら無視できると思われるような極めて小さな差が、やがては無視できない大きな差となる現象のことを指します。ブラジルで蝶が羽ばたくという取るに足らない小さな出来事さえ、やがてテキサスでトルネードが起きるというような大規模気候変動に影響を与える可能性があるのだから、正確な未来予想は不可能だということを示す比喩です。

とにもかくにも、数値シュミレーションによって近似解を求める際には誤差をいかに小さくするかが大きな課題となります。加えて、海上と高層大気の観測データが不足していることも数値予測による予報をさらに難しくしています。

的中率を上げる努力

近年は観測機器の進歩により、データの精度は上がってきています。地上の気象データを集める全国約1300ヶ所の「アメダス」の他、不足している上空のデータを集めるために気象衛星を使ったり、ゴム気球(ラジオゾンデ)を飛ばしたり、電波の反射を利用して風のデータ集める装置(ウィンドプロファイラ)を使ったりしています。

それでも現在のところスーパーコンピューターによる「数値予報」の的中率は70%です。ただし数値予報がそのまま天気予報になるわけではりません。数値予報では地形の複雑さなどによる小さな気象現象をとらえきれないので、その地域の気象特性を知っている各気象台の予報官が数値予報を補正します。これによって天気予報の的中率はここ10年で約82~86%台まで上がってきました。
[参考記事→的中率8割 天気予報、完全に当てるのは難しい? (日経)

tokyo
気象庁

いつの日か、ナビエ・ストークス方程式の一般解が求められるようになって、天気予報が必ず的中する時代が来るかもしれません。でもそうなったら大安の日曜日で天気予報が晴れの日の結婚式場の予約はまず取れないでしょうね…(^_-)-☆それに、思いがけず夕立に降られた後にふっと空を見たら虹がかかっていた…なんていう感動もなくなってしまうかも。
…と、最後はお茶を濁して、天気予報が外れることの言い訳を終わります
m(_ _)m

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