答案の書き方


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「なあ、お前何カンだった?」

「俺、3カン。お前は?」

「俺は1カンだよ。」

「へ~。あ、でも田中なんて0カンだってよ!」

…と、これは入学後間もない4月、東大駒場キャンパスでよく聞かれる会話です。彼らは何を言っているのでしょう?食べたお寿司の個数について話しているのではありません(笑)。

「3カン」とか「1カン」というのは、漢字で書くと「3完」とか「1完」ということで、入試の時数学で何問完答できたかを話しています。東大の入試における数学は、理系の場合大問が6問あり、1問20点の120点満点です。その6問のうち完答できた(最後の答えまで書けた)のが3問であることを「3カン」という風に言うのです。

では「0カン」の田中君(仮名)は数学が0点で合格できた、ということでしょうか。もちろん違います。田中くんが0カンでも合格できた理由は東大の数学の採点方法にあります。

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IMG_4258 Photo by CLF

 

0カンでも合格点に達する理由

私は初めて東大の答案用紙を見たとき、驚きました。それはA3よりも大きな紙で、受験番号と名前を書く欄があって、問題毎の解答欄を示すごくごく簡単な罫線が引いてある他はただの真っ白い大きな紙でした。この大きな白い紙2枚の表裏の広大なスペースが解答欄でした。

たとえば図形の問題で、ある角度を求める問題が出たとします。そしてその答えが30°であるとします。でも、受験生が答えとしてただ「30°」と書いただけでは20点の配点中2~3点しかもらうことはできません。いえ、1点ももらえない可能性もあります。なぜでしょうか?

それは東大がその問題の答えがわかる(≒直感力のある)人間を求めているわけではないからです。そもそも答えが合うか合わないかだけを問うのであればそんなに広大なスペースは必要ありません。

東大が求めているのは、30°だと結論することができる根拠について、数学的にきっちりと論理を積み上げることができ、それをしっかりと答案の中に「表現」できる人間です。そういう答案でなければ20点満点をもらうことはできません。

逆に言えば、最後の「30°」の答えまでは行き着かなくても、考え方の方針が正しく、途中まで数学的に正しく推論できていれば、12~3点を獲得することは可能です。田中君がたとえ1問も完答できなかったとしても、それぞれの問題について途中まで正しく答案が書けていれば、十分合格点に達するのです。実際、私の東大の同級生のうち入試で0カンだった人はそんなに珍しくありませんでした。

もちろん東大がいつでも正しいとは限りませんが、こと数学に関する限り、答え(結論)が何であるかより、なぜそう考えられるのかというその思考のプロセスの方にこそ深い意味があるのは間違いのないことです。

 

答案とは

入試に限らず、およそあらゆる筆記試験を受ける受験生にとって、答案とは自分のことを表現できる唯一の場です。採点官にとっては、答案に書かれていることがその受験生を評価する材料の全てです。そう思えば、答案を書く時に出し惜しみをしている場合ではないことがわかってもらえると思います。
受験生は

「ほら、自分はこんなにわかってますよ!」

ということをしっかりと答案の中で「表現」しなくてはいけません。もちろんその表現にあたっては数式だけでなく、日本語や時には図も交えながら、使える材料はすべて使っていきます。

アインシュタインは「わが相対性理論」の中で

「優美にすることは靴屋と仕立屋にまかしておけばいい」

と語ったボルツマンの言葉を紹介し

「論文はスマートに書く必要はない」

と書いています。
これは答案にも言えることです。問題集に付いているような格好の良い答案を書こうとする必要はありません。

数学のテストの採点方法は加点法です。
そして、ちゃんとした試験には、しっかりとした採点基準があり、

「○○のことが書いてあれば2点」

「△△のケースについて論じてあれば3点」

という風に細かく決まっていて、該当する記述があれば加点をしていきます。

加点法ですから、余計なことが書いてあるからと言って減点になることはありません。従って答案に「書きすぎ」を心配する必要はないのです。答案を書く時は、自分をアピールすることを意識して、多少くどいくらいにしっかりと書ききることが大切です。

…と、こんな風に言うと、生徒さんの多くは

「そんなこと言っても、何をどう書いたら良いかわからない」

と言います。私の見るところ、それは多分採点をするのが「先生」だと思うからです。

いや、もちろん実際には「先生」が採点をします。それはそうなんです。でも答案を書く時はそれを採点するのが先生だとは思わない方が良いです。なぜなら先生が読むものだと思って書くと、

「こんなことは先生には当たり前だから書かなくていいや」

「これも先生なら知ってることだろう」

と思ってついつい答案を削ってしまいがちになるからです。そして、数行の数式が書いてあるだけの随分と簡素な答案が出来上がってしまいます。

しかし、そのような答案は、先生にとってもわかりづらく、生徒がどのように考えて答えに行き着いたのが見えないものになります。しかも、簡素な答案は採点基準になっているような重要な記述が漏れてしまう確率も高まります。

そこで、答案を書く時には、それを友達が読むものと思って書いてみてください。できれば自分よりもちょっと数学ができない人を想像してもらえればベストです。そういう人に答案だけを使ってその問題がどうしてその答えになるのかを、説明するつもりで書くのです。そうすれば、

「この式変形は平方完成の変形なんだけれど、
あいつはわからないかもしれないな…
よし、ここには『平方完成より』と書いておいてやろう」

と、自ずと数式だけではなく、日本語も使わざるを得なくなるでしょう。あるいはグラフや図を答案の中に盛り込んで「説明」する必要性も感じると思います。

数学の答案は日本語の説明が入れば入るほど良い、と言っても過言ではないと思います。答案はそれがわかっていない人
に対して説明するつもりで書く
というのが答案を書く際の最大のポイントです。


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